アニメーションに関するDVDの紹介

銀河の魚 / クジラの跳躍
絵本作家・イラストレーターとして活躍する たむらしげる が監督・脚本を手掛けたアニメーション。 それぞれ20分少々の短編です。
各作品ともCGを使用し、ファンタジックで透明感のある画面になっています。 特に『クジラの跳躍』の3DCGを使用した映像は、観た当時、そのガラスの質感に驚きました。これが作られたのは1998年ですから、レンダリングとか合成とかの作業は、さぞかし大変だったんだろうと思います。
『銀河の魚』はしっかりしたストーリー展開がありますが、『クジラの跳躍』は主人公たちの思い出話が断片的に、そして静かに綴られていきます。 この点が、人によっては物足りなく感じるかもしれません。 しかし、クジラの跳躍を中心に"時間"をテーマにしたその内容は、想像力をかき立てられて私は好きですが。


『銀河の魚』  (1993)
監督・脚本・イラストレーション:たむらしげる
原作:たむらしげる『スモールプラネット』
音楽:手使海ユトロ
エグゼクティブ・ディレクター:潮永光生
制作:㈱愛があれば大丈夫
● 1993年度 毎日映画コンクール 大藤賞受賞
● ストーリー: 天文学者の老人(声:永井一郎)と孫のユーリー(声:鮎川昌平)は、ある夜、こぐま座の近くに怪しい星が1つ増えていることに気付く。するとその星が加わったこぐま座は、天の川を荒らしまわる巨大な化け物の魚に姿を変えてしまった。老人とユーリーは小舟に乗り、怪物退治に向かう。


『クジラの跳躍』  (1998)
監督・原作・脚本・イラストレーション:たむらしげる
音楽:手使海ユトロ
プロデュース・ディレクション:潮永光生
制作:愛があれば大丈夫
● 平成10年度 文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 大賞受賞
● ストーリー: エメラルドグリーンのガラスの海に住んでいる老人(声:永井一郎)は、ある日海面が大きく盛り上がっているところに遭遇する。クジラが海面に飛びだそうとする前兆だった。この老人の住む世界は時間速度が異なるため、クジラの跳躍も半日かかるのだ。海面から飛び出したクジラを見ようと次々に集まる見物人たち。昔船乗りだった老人もその様子を眺めながら、過去の記憶を思い出す…。
NFB傑作選 コ・ホードマン 作品集
カナダのコ・ホードマンの短編作品集です。
立体アニメーションを多く作っています。子供向けの作品が多いですが、大人でも十分に楽しめる質の高い作品ばかりです。
イヌイットの文化に関心があるようで、彼らに伝わる昔話を題材にしたり、イヌイットのアーティストと共同制作した作品もあります(No.3、5、6、12)。
表紙の写真は、「シュッシュッ」です。
彼のDVDは、他にテディベアのルドヴィック [DVD]があります。


●収録作品
1.ふしぎなボール(1969) … 針金人形(曲げただけのホントに簡単なつくり)がボールと戯れる作品。針金人形といってもなかなかあそこまで上手く動かせません。
2.マトリオスカ(1970)
3.フクロウとフレミング(1971)
4.シュッシュッ(1972)
5.ふくろうとワタリガラス(1973)
6.ルマーク(1975) … 平面の切り紙アニメ
7.砂の城(1977)
8.海底の宝物(1980) … タコが主人公の人形アニメーション
9.仮面舞踏会(1984)
10.チャールズとフランソワ(1988) … 老いや死がテーマの作品
11.箱(1989)
12.悲しみの白クマ -スニッフィング・ベア-(1992) … 動物たちの残量ガソリン吸引による中毒を警告する作品
13.生きものたちの庭(1997)
ユーリ・ノルシュテイン作品集
ロシアのユーリ・ノルシュテインの作品集。
《 映像詩人 》 と称えられる彼の作品は、間違いなく、世界遺産でしょう。
「霧につつまれたハリネズミ」は、ハリネズミくんが友達に会いに行く途中、野原で深い霧に包まれて迷子になってしまうお話。ノルシュテインに触れた初めての作品なのですが、その映像の美しさ、繊細な動きに魂を奪われてしまいました。
「あおさぎとツル」は、お互い気になっているのにも関わらず、相手に対して素直になれない男女の機微を描いた秀作。
「話の話」は、ノルシュテインの経験に基づいて作られた30分程の作品。1984年、評論家などに対して行なわれたアンケートにより、《 歴史上、世界最高のアニメーション映画 》として認められた作品でもあります。
表紙は「話の話」の一コマ。


●収録作品
1.25日・最初の日(1968)
2.ケルジェネツの戦い(1971)
3.狐と兎(1973)
4.あおさぎとツル(1974)
5.霧につつまれたハリネズミ(1975)
6.話の話(1979)
7.愛しの青いワニ(1966)【スタッフ参加作品】
8.四季(1969)【スタッフ参加作品】
マギヤ・ルスカ ~ロシア・アニメの世界~
1936年、モスクワに設立されたロシア最大の国営アニメーションスタジオ、"サユーズムリトフィルム"で活躍している大御所アニメーター達のドキュメンタリー。インタヴューを軸に話は進み、熱く、作品やアニメーション作りなどについて語っています。もちろん作業現場などもちゃんと収められています。家族と一緒にリラックスしている場面もあり、貴重な映像をたくさん見ることができます。主要な作品もインタヴューの合間に結構長めに紹介されているので、なかなかおいしいです。これからロシア・アニメーションを見ていきたい人も、もういくつか見た人も、きっと楽しめるのではないでしょうか。


●登場作家
フョードル・ヒトルーク
ユーリー・ノルシュテイン
・エドゥアルド・ナザーロフ
・ガーリー・バルディン
・ヨシフ・ボヤールスキー
・アレクサンドル・タタールスキー 他
●Chapter List
1.連邦動画撮影所の始まり
2.ソ連時代の作品
3.アニメーションの法則
4.独自の表現法
5.ノルシュテインの哲学と工房
6.パゾリーニと『くまのプーさん』
7.ソ連から新生ロシアへ
8.ガーリー・バルディンの世界
9.新時代の悲劇
ノーマン・マクラレン作品コレクション
ノーマン・マクラレンの作品集。
彼の約70篇の監督作品のうちの50作品を収録している三枚組。
特典ディスクにはアニメーション講座シリーズや、フィルムに"音を描く"やり方も見せてくれているタイトルもあります。実際に作業しているところはなかなか見られるものではないので、興味深いです。
収録作品数が少なく値段の安いノーマン・マクラレン 傑作選 [DVD]もありますが、出来れば作品数の多いこちらをお勧めします。
彼の作品群は、実写を使ったものやフィルムを用いた実験的な作品、抽象的な作品など、物語性の薄いものが多いので、ストーリー物重視で探している人にはあまり向かないかもしれません。
しかし、自由で想像力に富んだアニメーション表現の可能性を私たちに見せてくれますし、"動かないものが動く"不思議、"動きそのもの"の面白さ、線が"自在に変形"していく楽しさといった、ある意味アニメーションの原点ともいえる魅力にあふれていると思います。


●収録作品
■Disc 1 (1941-1959)
1.我らの勝利のために! 2.2+2=5 貯蓄への誘い 3.めんどりの踊り 4.ドル札の踊り 5.櫂の力 6.ひばり 7.君よ口をとざせ! 8.絵画の幻想 9.ホッピティ・ポップ 10.フィードゥル・ディー・ディー 11.色彩幻想 12.さあ今だ! 13.アラウンド・イズ・アラウンド 14.幻想 15.隣人 16.ささいな二つの話 17.線と色の即興詩 18.算数あそび 19.いたずら椅子 20.つぐみ 21.「ジャック・パーの素晴らしき世界」TVタイトル 22.クリスマス郵便はお早めに! 23.祝祭 24.つかの間の組曲
■Disc 2 (1960-1983&初期傑作選)
1.マクラレンの開会の辞 2.垂直線 3.水平線 4.ニューヨーク・ライトボード 5.ニューヨーク・ライトボードの記録 6.カノン 7.モザイク 8.球の配列 9.シンクロミー 10.パ・ドゥ・ドゥ 11.バレエ・アダージョ 12.ナルシス 13.スケルツォ 14.星とストライプ 15.点 16.ループ 17.ブギー・ドゥードル
■Disc 3 (特典ディスク Extra)
1.地獄 2.NBCより愛をこめて 3.ペンポイント・パーカッション 4.クリスマスのおもちゃ箱 5.マクラレンのアニメーション講座1 6.マクラレンのアニメーション講座2 7.マクラレンのアニメーション講座3 8.マクラレンのアニメーション講座4 9.マクラレンのアニメーション講座5 
ロッテ・ライニガー 『アクメッド王子の冒険』 特別版
ロッテ・ライニガー制作の、影絵による世界初の長編アニメーション作品。
1926年ドイツ(1999年映像修復、2004年サウンド新録音) 
モノクロ(染色)&カラー 本編66分


「アート・オブ・ロッテ・ライニガー」(前・後篇 計約31分)というドキュメンタリー付き。彼女自身による制作方法、手順の解説を見ることができます。
短編もたくさん作られていますので、それらも収録された、ロッテ・ライニガー作品集 DVDコレクション【3枚組】 もあります。
ピンチクリフ・グランプリ (Pinchcliffe Grand Prix)
イヴォ・カプリノ(Ivo Caprino) [1920 - 2001] 監督による、人形のコマ撮り手法で作られた長編アニメーション映画。
1975年ノルウェー 35mmカラー 本編88分


丘の上の小さな村「ピンチクリフ」に住む自転車修理工レオドル。しかし彼は、天才的な発明家でもあるのです。ある日レオドルは、かつて弟子だった男・ルドルフがレオドルの発明品である凄いエンジンのアイデアを盗み、レースで3連覇をしていたことを知ります。レオドルは、弟子の鼻を明かそうとレースに出ようとしますが、車を作るお金が無い。ところが、レオドルの車のデザインを見たアラブのお金持ちから資金を援助してもらうことに。こうして手作りのレーシングカー「イル・テンポ・ギガンテ号」を作りあげてレースに出場したレオドルは、ついにルドルフと対決する!というお話。


前半の流れは、ややまったりとしています。しかし最後のレースシーンは一転、スピード感満点。テレビゲームやF1の車載カメラで見られるようなカメラワークは、素晴らしい出来です。


また、映画のプロモーション用にスタッフ達がギガンテ号の実車を作ったというから、彼らの情熱に脱帽です。


人形の作りも動きも丁寧で、よく出来ています。レオドルと一緒に暮らしているアヒルのソランやハリネズミのルドビグといった、味わいがあるキャラも多数出てきます。 主人公が発明家であるので、彼の家にはいろんな仕掛けの道具があります。これも、一つ一つの部品が細かいところまで実に丁寧に作られています。
車や、わけのわからない機械たちは、いつの時代も男の子が好きなアイテムでしょう。子供はもちろん、大人まで楽しめる作品です。
イヴォ・カプリノ監督の短編集「カプリノ・フェアリー・テイル・ワールド」12本も付いたピンチクリフ グランプリ(デラックスEdition) [DVD]も出ています。


★日本劇場公開用HP:http://www.pinchcliffe.com/
YELLOW JACKET
【原題: La Tête dans le guidon】(2005年)


人形のコマ撮りアニメーション。ツール・ド・フランスを題材にした自転車レースのショート・コメディ。全26編。一本が1分半と短いので、複雑なネタでは無いです。クスッ、ニヤッと笑える、チープさを前面に出した、ゆる~い作り。台詞はほとんどなく、笑い声とか、「ワオ~」「オオゥ~」みたいな感じのみ。主人公たちは、鉄道模型の隅っこに置いてあるような人形のため、手足は動きません。関節がまともに動くのはカニぐらい。あとは、マトリョーシカとか、リカちゃん人形みたいなのとか、よく分からないおもちゃとかが出てきます。


レース場は、何故か真夏の海水浴場の砂浜。人間たちが泳いでいる裏で、人形たちの熱い自転車レースが繰り広げられています。たまに人間も登場しますけど。
内容は、ライバルのイエロー・ジャケットを罠にはめ、ズルをして勝とうとするブラック・ジャケットだが、最後はしっぺ返しを食らって負けてしまう、というもの。
なぜかイエロージャケットに味方をしてくれるカニがいるのですが、こいつがいい味出してます。
沖でタンカーが沈没して、そこから流れついたオイルが絡みついて負けてしまう(「黒い水たまり」)といった、風刺的要素を入れ込んだものもあります。
個人的には、コース上に開いた穴に落ちて、地球の反対側の中国まで落ちてしまう話(「人力車」)なんかが好き。
下記のHPで、一部の作品を見ることができます。


●収録作品
1.カウボーイ!?  2.マヨ・ジョーヌ  3.シャボン玉  5.ツールでフィギュア  6.ロケット作戦  7.S.O.S.空飛ぶ円盤  8.サイコな鳥  9.黒い騎士  10.ハチとビスケット  11.都会のステージ  12.ビーム作戦  13.ツールと豆の木  14.“コンパクト”なゴール  15.勝利の翼  16.黒い水たまり  17.悪だくみ  18.上りは得意  19.フォトフィニッシュ  20.奪われた砂漠  21.有名な舞踏会  22.ティータイム  23.霧の中のアヒル  24.タコとカニ  25.アイスでトップ!?  26.人力車 


★HP:http://www.pinchcliffe.com/


ペルセポリス (persepolis)
原作・監督・脚本: マルジャン・サトラピ (Marjane Satrapi)
共同監督・共同脚本: ヴァンサン・パロノー (Vincent Paronnaud)
2007年フランス 95分


パリで漫画家・イラストレーターとして活躍している、イラン出身のマルジャン・サトラピ。彼女の同名の自伝的バンド・デシネを原作とした長編2Dアニメーション。映画では、9歳から23歳までの多感な時期のマルジャンを描いています。
お話は1978年から始まります。主人公のマルジは、当時9歳。彼女はイランのテヘランに暮らす裕福な家庭で暮らしていました。しかし彼女に、イスラム革命やイラン・イラク戦争が襲いかかります。多感で反骨心のあるマルジは、新政権が推し進める宗教政策に反抗的な態度を取ってしまいます。そんな彼女を危惧した両親は、マルジをウィーンに留学させます。西欧で親元を離れて暮らすマルジは恋に迷い、「イラン人」である自分のアイデンティティに迷い、失意のうちにイランに帰ることになります。しかしマルジは故郷でも、自分の心の傷や制約だらけの社会と戦うことになります。
そんなマルジを支えているのは、ブラジャーの中にジャスミンの花を入れているという彼女のおばあちゃん。「常に公正明大であれ」とマルジに諭しているシーンは、自分が言われている気分になります、、、。


この作品を映画化するにあたって実写ではなくアニメーションにした理由を、マルジャンが特典映像のメイキングの中で語っていました。それによると、普遍的な物語だと思えるように、抽象的な側面を持っているアニメーションにしたのだそうです。


テンポ良く進むので飽きずに見ることができます。でも、もう少しマルジの心の葛藤を深く描いてくれたら、もっとおもしろかっただろうなという感想を持ちました。でも逆に、テンポのいいアニメーション表現のおかげで、そのあたりがあまり深刻にならずに済んだ、とも言えるのかもしれませんが。


★HP:http://www.sonyclassics.com/persepolis/


『hesheit』 ウィスット・ポンニミット アニメーション集
タイのバンコク出身の漫画家、ウィスット・ポンニミット (Wisut Ponnimit) [1976~ ] が描いた短編アニメーション集。 全17編+特典映像2編


同名の漫画作品『hesheit』を自らの手でアニメーション化したものです。ほとんどの作品が荒い線画だけで描かれており、画の作りこみや動きで何かを表現しようとすることに全く関心がない様子。とりあえず動かしたいのだけど、一つ一つに時間をかけたくない、作品のコンセプトやそれぞれの内容のニュアンスが伝わればよい、という感じです。素人感を逆手に取ったようなその作りは、逆にそれが彼らしい味となってるのかもしれません。


内容はそれぞれ、心の襞にチョッと触れるような話が続きます。
アニメーション作品としては決して良い出来とは言い難いのですが、彼が持つ独特の画のタッチや世界観が好きな人は楽しめると思います。


★作家HP:http://soimusic.com/wisut/


ザ・プラネット (The Planet)
アルゼンチン音響派のミュージシャンであるフェルナンド・カブサッキ (Fernando Kabusacki) が作曲した《 The Planet 》という曲を元に、アルゼンチンのアーティスト達がアニメーションを制作したオムニバス作品集というか、ミュージック・クリップ集というか… そんな51分の作品。


さまざまな作風のアニメーションを観ることができます。まあ、ミュージック・クリップ風の作りなので、それぞれ内容はあって無いような感じ、というか、楽しんで作ってる感じ。何も考えずに、音楽を楽しみながら眺めて観る感じがちょうどいいかな、と思います。


●参加アーティスト
アンドレア・オステラ、モニカ・ペラルタ、マウス、ミレ、マックス・カチンバ、ウーゴ・カーバ、シルヴィア・アンブレス・スガスティ、ホセ・マリア・ベッカリア、ドクトル・マスカマンガス、クリスチアン・トゥルデラ、マリア・ホセ・ゴンザレス、フロレンシア・バレストラ、シルヴィア・レナルドン、フリエータ・ボッカルド、パブロ・ロドリゲス・ハウレギ、セミージャ、エステバン・トージ、ディエゴ・ロジェ、ルイス・リカルド・ブラス

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