エストニア

プリート・パルン (Priit Parn)

(1946~ )  かなりインパクトのある巨匠(もちろん作品が)です。凄いです。特に 「ホテルE」(1992)のヴィジュアル、構成のブッ飛び具合たるや、比類無しです。
「雨のダイバー」(2010)は、モノトーンを基調としたセルアニメーション。私たちが普段気にしない、気にしても見て見ぬふりをしてやり過ごしているような"ズレ"が現代には多く潜んでいます。毎日の社会との関わりである仕事とそこでの付き合い、また親しい人との関係、プライベートの空間といった中にもそれは見つかります。これが当たり前だと心の奥底に仕舞い込んで半ば諦めている、まるでいつまでも止みそうもない雨の日のような心に響いてくる、そんな、示唆に富んだ面白い作品です。見るたびに発見があります。
その他に「おとぎ話」(1984)、 「草上の朝食」(1988)など、どうしてこんなイメージが思いつくのだろうと、不思議に思う作品ばかり。
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マッティ・キュット (Mati Kutt)

(1947~ )  「空の歌」(2010)は、なんともシュールな人形アニメーション。 怪しげな研究所のような施設で、数人の男女が黙々と奇妙な動きの訓練を受けています。その中から一人の男が無事に合格?して 郵便配達員として任務に赴きます。地上に出た彼は訓練の成果を活かし、電線に通した一通の手紙を長い棒で押しながら、自分の任務を果たそうと懸命に走っていきます、、、。 いい意味で期待を裏切る展開、そして不思議な映像感覚にやられっぱなしです。 全編抑えた色合いで、低く流れる音楽も映像にマッチしてて良いです。
「リトル・リリィ」(1995)は、濃密で"キモカワイイ" テイストの絵が画面いっぱいに広がるアニメーション。 少女リリィのお父さんは空を飛ぼうとがんばってるのだけど、自分の周りにたかっているハエをたたき殺しています。そんな父を見たリリィは、科学的かつ理論的?な理屈でハエを擁護。ハエを殺すことをやめないなら食事をしないと宣言した彼女はやがて小さくなってしまい、掃除機で吸われて捨てられてしまいます。最後はハエに乗って無事に家に帰還するというハッピーエンド?で終わるのですが、、、。 とにかくブットんだ展開。 この作品の音楽も、不思議な映像とストーリーを充分引き立てていて秀逸だと思います。


ウロ・ピッコフ (Ulo Pikkof)

(1976~ )  「身体の記憶」(2011)は、糸で作られた人形を使った作品。 木製の貨物列車に乗せられた糸で作られた女性たち。しかし彼女らは、体を形作っている糸を、貨物室の外の何者かに引っ張られてしまい、自分自身が無くなってしまうという危機に直面しています。 彼女たちは必死になって抵抗しようとしますが、そこは狭い箱の中・・・。 見ているこちらも緊張し、得も言われぬ恐怖感に襲われます。
「ディアロゴス」(2008)は、シネ・カリグラフで作られた作品。現代文明をおちょくってます。次々と画面が切り替わり、この技法らしいぶれまくりで単純な線の落書きのような感じが、テーマにマッチしています。音楽も良い感じ。
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ハンガリー

ロシェフ・フレンツ (Rofusz Ferenc) 【フレンツ・ロシェフ】

(1946~ )  「ハエ」(1980)はクレヨンでセルに手書きされたアニメーション。ハエの視点でワンカットで進行するという不思議な世界を通して、運命の切なさが描かれています。ハエの見ている世界が、魚眼レンズを通して見た感じの画で描かれていて、いわゆる背景の動きだけで物語が進んでいきます。先が見えず、あまりの作画作業の大変さに、アシスタントが音をあげてどんどんやめてしまったそうです。


ホルヴァート・マーリア (Horváth Mária) 【マリア・ホルヴァット】

(1952~ )  「スチールス ~追憶のスケッチ~」(2000)は、小さなサイズの画面の中に、様々なイメージ映像が綴られていきます。台詞が無く、特に物語性もある訳ではないので、映像から思い浮かぶイメージ・経験に身をゆだねる感じで観ると良いのではないかと思います。BGMは、楽器を使わずに女性の歌声を多重録音してあるもので、これが映像の雰囲気と合っていて、とても心地良いです。イメージ映像を重ねていくタイプの作品はたくさんありますが、私はこの作品、結構好きです。
「グリーンツリー・ストリート66番地」(1992)は、実写を使ったり、壁に描いた絵を動かしたりと、様々な技法で作られています。友人宅の庭で、自分の子供の描いた絵を使ったりして撮影されたというこのアニメーションは、母親である女性だから作り得た、愛情とわくわく感のある作品です。


ポーランド

ズビグニュー・リプチンスキ (Zbigniew Rybczynski)

(1940~ )  数多くのPVを作っている方。 「タンゴ」(1980)は、実際の人物をコマ撮りして作られたアニメーション。 小さい部屋に入れ替わり立ち替わり人が入ってきます。その動きはリズミカルにループをしており、しかも部屋に入ってきた人たちは、お互いに全く干渉しないのです。 コミカルなのに緊張感漂う画面に釘づけになってしまう、不思議な映像。 ポーランド初のオスカー受賞作品(1982年・第55回)でもあります。


マレク・スクロベツキ (Marek Skrobecki)

(1951~ )  人形アニメーションを作っている方です。 「Ichthys」(2005)は、若い男がボートに乗って、はるばる一軒のレストランを訪れる。メニューを注文するが、ウェイターは食材を調達しにレストランを出て行ってしまう。その間、客の男はレストランで待ちぼうけ、、、。 求めるものを手に入れるということについて、考えさせられる作品。
「ダニー・ボーイ」(2010)は、首がない人間達(つまり、目が見えない)の世界で、ただ独り首がある男(彼だけ目が見える)が、首のない女性に恋をするお話。 以上、2作品とも少しブラックなオチですが、含蓄のあるお話です。



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